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今年の配当金額を決定する場合は、要注意!

  パリ弁護士会所属弁護士 辻 昌子
セーヴェーエムエル法律事務所パリオフィス
 

7月13日にフランス国会は、2011年の配当金額が、過去2年の平均配当金額より配当額が多くなる場合は、従業員にボーナスを支給しなければならないという法律を可決しました。(Loi de Financement Rectificative de la Sécurité Sociale − LFRSSの中にある、Prime de partage de profitsという規定です)

ちなみにこの法律は、現時点(2011年7月21日)において、まだ官報に掲載されていないので、効力を発していませんが、おそらく月末には掲載されるであろうといわれています。

Prime de partage de profitsとは、利益を従業員と株主の間で分けるということを目的とした規定ですが、なぜ今こういった法律が可決されたかというと、この利益分配は、サルコジ大統領が前大統領選挙のときに掲げていた公約で、いまだに果たしてない公約のうちの一つだからです。 2012年の大統領選挙に向けた政策ではないのかとされています。

【法の趣旨】

2011年に配当金を株主に配当する会社が、過去2ヶ年に配当した平均配当金額よりも多く配当する場合は、従業員にボーナスを支給する義務が発生します。 2011年1月1日からこの法律が施行される間に、最終事業年度の配当金を配った会社にあたっては、この法律は遡及的に適用されます。

【対象企業】

従業員が (i) 50名以上のフランスの会社であって、(ii) 2011年に配当金を株主に配当する場合に、過去2事業年度に配当した平均配当金額よりも多く配当する会社が対象になります。

50名以上の従業員とは、該当事業年度の間に合計で6ヶ月以上の間、50名以上雇っている会社になります。 2011年に配る配当金とは、2011年1月1日以降に開催された株主総会が決議した、前事業年度における配当金のことをいいます。 また配当した平均配当金額とは、一株に対する配当金額が過去2年の平均配当金額より多い場合をいいます。

例えば50名以上の従業員を抱える会社が、2010年12月31日を末日とする事業年度の計算書を決議する株主総会を2011年6月30日に開催したとします。2008年の事業年度では一株につき15ユーロ、2009年度には一株につき25ユーロを配当しました。今回の株主総会で、一株につき21ユーロ以上配当することを決定した場合は、全従業員にボーナスを支給する義務が発生します。

対象会社がグループ会社の一会社である場合は、そのグループの筆頭であるフランスの親会社が配当した配当金額が対象となります。当該筆頭親会社が上記 (ii)の配当をした場合は、そのグループ全体の従業員にボーナスを支給しなければなりません。

【支給方法】

ボーナスの最低額、最高額は決まっておらず、支給額および支給方法は、雇用主と従業員代表機関(Représentant du personnel)が交渉して決定します。当該交渉は、配当金の配分を決議した株主総会から3ヶ月以内に合意されていなければなりません。

交渉が難航して3ヶ月以内に合意に至らなかった場合は、合意に達しなかった旨の議事録を作成した上で、雇用主は自由にそのボーナスの額を決めることができます。 合意書もしくは合意に達しなかった旨の議事録は、労働局(Direccte)に提出しなければなりません。

2011年1月1日から当法律が施行される間に配当された配当金については、2011年10月31日までに、合意書もしくは、合意に達しなかった旨の議事録を作成していなければなりません。

【優遇措置】

各従業員に支給するボーナスにつき、年間1,200ユーロを限度に、事業主負担税(charges patronales)、労働者負担税(charges salariales)などの社会保障負担(charges sociales)が免除されます。ただ、補足給料(forfait socialの6%)、CSG(7.5%)とCRDS(0.5%)については課税されます。 この優遇措置は、上記合意書もしくは合意に達しなかった旨の議事録を労働局に提出しなければ、適用がありません。

この法律で規定している義務は、50名以上の従業員を雇う会社に適用されますが、労働者が50名以下の会社でも適用することができます。その場合、当該優遇措置も適用されます。

【罰則】

妨害罪(délit d'entrave)として3,750ユーロの罰金が科せられる他、1年未満の拘禁刑が科せられます。

このように、Prime de partage de profits(利益分配ボーナス規定)は一見、立場の弱い、サラリーマンの利益を考慮した法律であるような感じがしますが、一定の要件をみなさないとその適用が義務付けられておらず、また、雇用主と従業員代表機関が合意に至らなかった場合は、雇用主側が一方的にボーナスの金額を決められることができ、しかも優遇措置があるということから、表面的な改革であるといわれています。そのため、2012年の大統領選挙に向けて、投票数を獲得するために講じられたものではないのかとされています。

セーヴェーエムエル法律事務所パリオフィス
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2011年7月26日付け