「右派統一の公選」論、「クナフォ」の有無で論争に
共和党(保守)の有力者らが、大統領候補選びで「右派合同」の公選の実施を呼びかけている。
参加者として極右政党「ルコンケット(失地回復)」のクナフォ欧州議員の名前を具体的に挙げての呼びかけで、党の内外で物議を招いている。
この呼びかけは、共和党のボキエ下院議員団団長が積極的に展開している。
リスナール下院議員(カンヌ市市長)など数人が明確に支持している。「ルコンケット」は、テレビタレントとして活躍したエリック・ゼムール氏が立ち上げた極右政党で、クナフォ氏はゼムール氏の伴侶でもある。
ボキエ氏は、ゼムール氏ではなく、共和党内でも一定の評価があるクナフォ氏の参加をあえて認めることで、自らが描く右派統一のビジョンを示したことになる。
クナフォ氏は高級官僚出身で、ゼムール氏のブレーンのような役割を担っている。
政治的には、キリスト教のアイデンティティを重視し、経済的には自由主義の推進を掲げている。
ボキエ氏とはこれら2点で政治的な立場がほぼ重なる。
ボキエ氏は、「ルコンケット」の抱き込みには積極的だが、もう一方の極右政党RNについては、「経済的に社会主義に傾いている」という理由を挙げて、「右派」には属さないとして攻撃する姿勢を崩していない。
ボキエ氏らの動きには、党内にも反対論がある。
政治的な立ち位置という点ではさほど違いのないルタイヨー党首は、主導権を奪われるのを恐れていることもあり、公選の実施そのものに反対し、共和党の候補を擁立すべきだと主張している。
共和党内のはぐれ有力者で、大統領選への出馬に意欲を示しているベルトラン氏(オードフランス地域圏議長)も、極右ルコンケットが加わる公選には決して参加しないと言明。
マクロン政権と協力関係にある右派政党オリゾン(地平)のフィリップ元首相も、やはりルコンケットの参加を強く拒否した。
ともあれ、この騒動は、イスラム教の脅威と陰謀論を得意とするゼムール氏流の言説が、「キリスト教のアイデンティティ」の名の下に共和党内に深く浸透していることを示唆している。
