無料法律相談からQ&A 「フランスの定年について」
最近の無料法律相談における、現在フランスのストライキの原因となっている定年延長の問題についての質問および回答です。
1.現在のフランス定年改革へのストライキを含む抗議行動は、現在62歳の定年を64歳へ延長することに起因すると聞いていますが、働ける期間の延長になぜ反対するのかわかりません。
ここで問題の定年は、労働者が何歳まで働く権利があるとの意味での定年ではありません。この意味でのフランスの定年は70歳です。従って、全ての労働員は希望すれば、強制的に退職させられることなく、70歳まで働く権利があります。
2.それでは、現在問題となっている62歳から64歳への定年の引き上げの定年とはなんでしょうか?
多くのフランス人は、上記の通り70歳まで労働する権利があっても、その権利の行使よりも、できるだけ早く満額の年金の受給権を得て、引退生活を送ることを希望します。
2011年6月までは、60歳に達すれば、労働者が年金を積み立てた期間に比例した満額の年金をもらえましたが、その後2017までの間に段階的に、この満額の年金を受領できる年齢が引き上げられ現在は62歳となりました。そして今回の改革は時間をかけて満額の年金を受給できる年齢を64歳に引き上げるものです。
今回の改革により、仮に、若くから労働を開始して、64歳以前に満額の年金をもらえる勤続年数に達した労働者も、64歳以前に退職すると年金が減額されるので反対しているわけです。
3.労働者の定年退職の年齢が70歳との説明ですが、それ以前に辞めさせることはできませんか?
67歳以上69歳以下である1955年以降出生の労働者(それ以前に出生の場合にはその年齢により65歳9カ月、66歳2か月又は66歳7か月以上の労働者)に対して、定年退職を勧奨することができます。但し、この場合でもあくまで「勧奨」なので、定年退職を強制することはできません。従業員に定年退職の勧奨を行う場合には、当該従業員が67歳から69歳までのいずれかの誕生日に達する3ヶ月前までに、雇用者が当該従業員に対して退職の意向の有無を書面で質問します。当該従業員が勤続を希望すれば、次の1年間は退職の勧奨をおこなうことができません。
橋本国際法律事務所
弁護士 橋本明