CCIJF – 在仏日本商工会議所

食品・化学・薬品・化粧品:高梨 浩志/大日本印刷パリ駐在員事務所

謹んで新春のお慶びを申し上げます。

2020年に続き、昨年も新型コロナウィルスの影響を大きく受けた1年となりました。欧州、米国や日本などでワクチン接種が進み、昨年後半は正常化に向け経済活動が再開されたのも束の間、新たな変異株オミクロン株の出現により、世界経済はまた正常化への道のりが見通せなくなってしまいました。

業界においては、ロックダウンの影響による巣ごもり需要の影響、またフランスにおいては政府による18歳の学生向けカルチャーパス(文化芸術活動支援のために300ユーロの資金援助を行う制度)の後押しもあって、マンガ出版の販売額が2021年1月~8月までで前年比約2倍を記録しています(ドイツ調査会社GFK調べ)。スマートフォンの普及に代表されるデジタルデバイスの伸長により、情報関連の印刷市場規模は前年割れを続けていましたが、皮肉にもコロナ禍においてフランスで日本のマンガ人気が再沸騰し、出版および印刷双方の業界にとって好影響を及ぼす結果となりました。

こうした特需は一過性のものであり、カーボンニュートラルに向けた環境インパクトの低減が喫緊の課題であることを考えると、紙メディアからデジタルへのシフトはこれからさらに加速していくものと予想されます。

マーケティング・コミュニケーション領域においては、デジタルマーケティングやメタバース、XR空間の活用など、5G技術による現実と仮想空間を組み合わせた商取引やイヴェント開催がさらに深化していくものと考えられます。オンライン上の商取引の安全性を担保する仕組みとしてのブロックチェーンについても市場の理解が進み、普及が進んでいくでしょう。

情報コミュニケーションに関連するメディアが紙からデジタルへの移行を加速させていく一方で、世界的な食糧の需要増加に伴う包装材の需要は今後も増加する、と言われています。食料品の包装材については、中身を護るという観点からバリア性の高い包装材の開発が行われてきました。例えば、紙の内側にアルミ蒸着を施すなど、複数の素材を組み合わせることで中身の食品や液体を保護するパッケージが長らく利用されてきましたが、環境へのインパクト、再利用などの観点から単一素材(モノマテリアル)による包装材の開発と普及が今後進む、と言われています。特に欧州各国では環境保護を目的とした規制の法制化が進んでいくため、規制に対応する形でリサイクル可能な包装材の開発と実用化が進んでいくことになるでしょう。

グーテンベルグが活版印刷技術を発明して以降、印刷技術はより多くの人々に情報や製品を届ける機能として役割を果たしてきました。カーボンニュートラルを実現するためには、大量生産型のビジネスモデルから高付加価値型のビジネスモデルへの転換のスピードを上げていくことが必要となっています。業界としては、今まで培ってきた情報技術と印刷技術からの応用展開からどのような価値が提供できるのか、コロナ後のニューノーマルにおける未来のあるべき姿を描き、バックキャストで価値創造を行っていくことが求められる年になるでしょう。

令和4年元旦