CCIJF – 在仏日本商工会議所

通信・情報・エネルギー:石川 淳/東京ガス

エネルギー業界見通し

2021年は、2019年12月に掲げられた欧州委員会が掲げるイニシアチブ「欧州グリーン・ディール」が一層加速した年であったと共に、欧州各国の思惑が異なっていることが改めて明らかになった年でした。

2021年6月29日に欧州気候法が欧州議会で成立したことをうけ、7月14日には2030年の温室効果ガス削減目標を1990年比で少なくとも55%削減を達成するために「欧州グリーン・ディール」を包括的に推進する政策パッケージ「Fit for 55」が発表され、また12月15日には再生可能ガス/天然ガス/水素の域内市場のための共通規則に関する欧州指令など、このパッケージを補完する諸政策が発表されました。

一方で、COP26においては、エネルギーに関するステイトメントの公表やアライアンスの立上げが発表されましたが、それに対する欧州連合各国のスタンスはそれぞれ異なったものでした。

また原子力については、11月9日にマクロン大統領が原発への依存度を下げるという従来の方針を事実上変更し、国内での原発建設を再開するとの方針を発表しましたが、ドイツではメルケル政権が2011年に決定した脱原発の完了時期である2022年末まであと1年と迫るなか、新政権もその政策を引継ぐことを表明しています。

欧州連合の理事会議長国は、2022年1月より半年間フランスが務めるなか、その舵取りが注目されます。

また、2021年はエネルギー価格が大きく高騰した年でした。通常こうした価格変動は季節的なものであり、地域も限られているなか、第3四半期にエネルギー価格の急騰がはじまり、第4四半期には天然ガスのスポット価格は欧州とアジアで4倍以上という記録的な水準に達するなど、価格急騰の継続期間と世界的な広がりはかつてないほどとなりました。また、この影響は石炭や原油市場にも波及しており、エネルギー価格は2001年以来の高い水準となりました。(国際通貨基金論評より)

2022年については、世界銀行が半期に一度発表する一次産品市場の見通し2021年10月号の中で“2021年のエネルギー価格は前年比で平均80%以上高騰し、2022年も高い水準が続くが、供給懸念が緩和されて2022年後半には下落し始める”、“(天然ガスや石炭の価格は)2022年は需要が減少して供給が増加することで価格は下落するとみられる。ただし、在庫水準が極めて低く、供給制限が続いているため、短期的にはさらなる価格急騰も考えられる”、との見通しを示しました。

また、この価格高騰をうけて、欧州連合エネルギー規制機関間協力庁が欧州委員会に対して、より望ましい電力市場の設計に関する提言を2022年4月に行うことが予定されています。

日本においては、2021年10月22日に第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。

基本計画は以前より、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図る、S+3Eの視点が重視されていますが、それに加え、今回の基本計画では、① 2020年10月に表明された「2050年カーボンニュートラル」や今年4月に表明された新たな温室効果ガス排出削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すこと、② 気候変動対策を進めながら、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服に向け、安全性の確保を大前提に安定供給の確保やエネルギーコストの低減に向けた取組を示すこと、の2点が重要なテーマとして策定されています。

また、2022年6月を目途に新たにクリーンエネルギー戦略の取りまとめが予定されています。この新たな戦略は、エネルギー基本計画や2020年12月に策定されたグリーン成長戦略と共に、2050年カーボンニュートラルや2030年温室効果ガスを2013年度比46%削減の実現を目指すなかで、将来にわたって安定的で安価なエネルギー供給を確保し、更なる経済成長につなげるための戦略となるものです。