CCIJF – 在仏日本商工会議所

銀行・証券・保険:坂本 航司/東京海上日動火災保険

【損害保険市場2022年】 “ハード化”は続くが、上げ幅は若干弱まる見通しか

◆損害保険のハード化とは

•   損害保険市場は、収支が悪化している局面では保険料率の値上がりがあり、改善局面では値下がりしますが、その値上がり局面をハード化、値下がり局面をソフト化と言います。

•   マーケットは、2017年までは緩やかなソフト化局面にありましたが、2018年からハード化に転じ、2019年から2021年には、大幅な上げ/超ハード化ともいえる局面が続いていました。

•   上記の傾向は、財物(火災)保険/Property Insurance、賠償責任保険/Liability Insurance、貨物保険/Cargo Insurance、サイバー等の特殊保険/Specialty Insuranceのいずれも、概ね同じでした。

◆近年のハード化の理由

•   収益悪化の理由は、保険の種類によって異なりますが、例えば、財物保険の収益悪化/ハード化は、主に下記の要因にのるものでした。
① 地球温暖化による相次ぐ大規模自然災害
② 大規模郊外利益損害(CBI:Contingent Business Interruption)の多発
③ 世界的なインフレ
④ コロナによる不確実性

•   上記②のCBIとは、サプライヤーの工場で火災等が発生し、部品供給が滞って自社工場の操業も停止した場合の利益損害を担保するものです。欧米系自動車メーカーを中心に、一時期、このCBIで巨額損害が多発し、マーケット収益悪化の大きな要因となっていました。なお、本年顕著だった、半導体の供給不足による操業停止は、火災、自然災害等によるものではなかったので、当該担保項目の対象外となっています。

•   保険は、確率論で採算のバランスを取る仕組みになっていますが、上述①②のリスクでは、近年、これまでになかった規模の大口事故が、同時多発的、断続的に発生し、従来の確率論が通用しなくなっていることが問題で、それがハード化の最大の要因となっています。

◆保険契約者、保険会社への影響

•   ハード化の傾向は、再保険(保険会社がかける保険)市場に非常に顕著に現れます。これは、保険の仕入原価の上昇を意味し、個々のお客様の保険の引き受けでの料率アップにも繋がり得ます。

•   上述の①や②の大規模損害の多発は、保険市場全体としての補償ファンドの棄損、いわば体力の低下に繋がりますが、そうした中、さらなる大規模損害に見舞われるとファンドが破綻する恐れがあるため、大規模損害に繋がりそうなリスクの補償が絞られ、個々の契約の補償額が引き下げられる可能性があります。

2022年の見通し

•   2021年に入り、それまで登り一本調子だった料率の上げ幅の鈍化がみられ、2022年もその傾向は続くと想定されますが、料率の下げトレンド/マーケットのソフト化には、未だ至らないと思われます。また、サイバー等、一部のリスクは、上げ幅の鈍化もまだ先となる可能性もあります。

※上記はマーケット全体のトレンドであり、個々のお引き受けの料率は、契約毎の保険成績等も加味され、上記とは異なるものとなる可能性がある点、お含み頂ければ幸甚です。

東京海上日動火災保険 坂本航司