小売・流通:牧野 高明/株式会社大丸松坂屋百貨店 パリ駐在員事務所
2023年百貨店業界の見通し
新年明けましておめでとうございます。
昨年はコロナによる行動制限が解除され、店舗への客足が戻ってきたことに加え、10月には海外旅行者の入国制限も緩和されたため、インバウンド売上も回復基調にある百貨店業界。
2023年は百貨店が復活からさらなる成長を遂げるため、以下の取り組みが加速していくと思われます。
1つ目は「富裕層ビジネスの拡大」です。ラグジュアリーブランドや宝飾、時計、アートなど富裕層をターゲットとする商品は大きく売上を伸ばしています。今後は、長年の信頼関係を築いてきた外商顧客だけでなく、30代〜50代の新富裕層の支持を得るために、高級商材の品揃えの拡充を図るとともに、旅行や自動車、不動産など新たなコンテンツの提供、イベントや専用ラウンジなどパーソナルなサービス・体験を提供する取組が重要となります。
2つ目は「デジタル戦略の強化」です。コロナ禍により店頭での販売が制限された中、アプリや専用サイトなど顧客とのオンライン上でのタッチポイントを増やすことが今後の百貨店にとって非常に重要であることが分かりました。デジタル戦略の強化は、アプリを使用したリモートショッピングサービスの提供、専用サイトでの希少価値の高い商品の販売だけでなく、オンライン上での顧客行動・購買データの収集、蓄積、活用により、顧客との関係性を深化し、よりニーズに沿った商品・サービスの提供を可能にします。また、幅広い顧客層の獲得にも繋がるため、今年度は業界をあげて、さらに取組が加速していくことと思われます。
3つ目は「サステナビリティへの取組」です。本年も未来へ向かう持続可能な社会の構築に向けて、リサイクルやアップサイクル商品の販売、フードロス削減に向けた取組、地元の伝統工芸品の展開、地域参加型のイベントの開催など、環境活動と地域共生の両面から様々な取組が各店舗を通じて行われることでしょう。
2023年も在仏商工会議所会員各社の益々のご繁栄と、会員各位およびそのご家族のご健康、ご多幸を心よりお祈り申し上げます。
株式会社大丸松坂屋百貨店
パリ駐在員事務所
牧野 高明