CCIJF – 在仏日本商工会議所

機械・自動車・建設 :山田 進一/クボタ ヨーロッパ

新年明けましておめでとうございます。

弊社が建設機械部門で主に扱うエクスカベータは0-8トンクラスのいわゆるMini、Midiと呼ばれるセグメントで、大型パワーショベルとは異なり、住宅の基礎工事や道路工事、ガス、電気、水道、最近では高速インターネットといったインフラの掘削工事が主なアプリケーションです。

よって小型建設機械の需要はこれらのインフラ投資や住宅着工数と密接に関係します。
フランスのエクスカベータ市場はリーマンショック後急激に需要が落ち込んだ2009年の4,000台から2021年に過去最高の14,000台となり2022年も過去最高を更新する見込みです。建機市場はコロナ禍からの回復が早く、2020年後半には既に勢いを取り戻していましたが、その後、あらゆる産業での需要回復も相まって半導体不足や鋼材不足で急激な需要増に供給が追い付かない状況が続いています。
急激な需要増の背景のひとつは奇しくも長らく続いたコロナ禍によるロックダウンが関係しています。自宅のリノベーションを行う人が増えたり、テレワークが制度として成立することで都心のアパルトマンを手放し郊外へ引っ越す人も多く、都市郊外での戸建て需要が急速に伸びたことがあげられます。またコロナからの経済回復のため、政府主導のインフラ工事が多く発注されたことも要因のひとつです。
2010年に法制化されたパリ大規模都市再開発計画(グラン・パリ)による様々なプロジェクトは建設市場を大きく後押ししています。鉄道、地下鉄やトラムの再整備、郊外の街づくりによる新たな住宅着工などに加え、2023年にラグビーワールドカップ、2024年パリ五輪といったスポーツイベントもグランパリ計画のインフラ整備と関連しており業界は勢いづいています。

一方で2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻に端を発した鋼材・木材などの建築資材の価格上昇、及び金利高の影響が個人の住宅購買意欲に影を落とし始めており、今後もエクスカベータ市場が右肩上がりを続けるかどうか不透明な部分もあります。
本年2023年につきましては進行中の各プロジェクト工事を背景に小型建機販売は底堅く推移すると見られますが、2020年後半から続く急速な市場の伸びは一旦減速すると懸念しています。


先行きの見通しが一層難しくなる昨今ですが、コロナそしてロシアの軍事侵攻の収束により安定、平和な欧州が一日でも早く戻ることを切に願います。会員の皆さまのご健康ご多幸をお祈りし年始のご挨拶とさせて頂きます。

クボタ ヨーロッパ
山田 進一