CCIJF – 在仏日本商工会議所

観光・運輸・レジャー業界:山口 智啓/全日本空輸

2023年(令和5年)あけましておめでとうございます。

2022年は新型コロナウィルス感染症(以下COVID-19)からの脱却に向った1年となりました。COVI-19による影響を最も受けた第7分科会の「観光・運輸・レジャー」業界にとっては回復の期待を持って準備に入った春にウクライナ情勢の大きな影響を再度受けることとなり、アジアと欧州の流動は再度大きな影響を受けました。

国際航空協会(以下IATA)によりますと世界全体では2022年は順調に需要回復に向かい、2022年9月には前年同月比57%増で、パンデミック前の2019年比で73.8%まで回復していますが、アジア太平洋地域は前年同月比464.8%と高い伸びを示しているものの、2019年比では58.5%減と他の地域に比べると大きく後れを取っています。これは日本を含むアジア諸国の規制緩和が欧米に比べ厳しい状況が続いたことが起因していると考えられます。
欧州地域はパンデミック前の78.4%まで順調に回復、北米も89.4%まで回復しアジア太平洋地域の遅れが顕著になっています。しかし、日本が10月より水際対策の緩和に舵をきり、中国も12月にはゼロコロナからの転換を進めており、アジア太平洋の需要回復に期待するところであります。
日本の出入国者数では1月から10月までの実績では日本出国が19.6万人で2019年比88.3%減、訪日が15.3万人で同比94.3%とアジアの中でも厳しい状況にありますが、10月には日本出国が79%減、訪日が80%減と夏以降徐々に回復傾向にあります(JNTO統計)。10月の水際対策緩和で更に大きく需要も伸びている状況にあり、成田空港の10月の旅客数は前年同月比3.1倍、国際線の外国人旅客は7.3倍と、円安の追い風もあり観光客を中心に急増しています。

IATAは2023年の航空旅客を22年比1割増しの42億人になると見通しを発表しました。これはCOVID-19感染拡大前とほぼ同等の水準です。英国の航空データ分析大手
「Cirium(シリウム)」による今後の世界の座席供給量の見通しでは2019年水準に回復するのは2023年10月(年率ベースでは2024年)と予測しており、2年前のシナリオより約1年前倒しになるもののウクライナ情勢の変化に伴い昨年の予測2023年8月よりやや後退した予測となっています。12月時点の欧州とアジア太平洋地域の便数が2019年比で24%減となっていることが大きく影響しています。ロシア領空が閉ざされたまま需要急回復する中での今後の動向に注視が必要です。併せて為替、ユーロ高、円安についても注視が必要です。

2023年はラグビーワールドカップフランス大会(9月8日~10月28日)、2024年パリオリンピック・パラリンピック(7月26日~8月11日、8月28日~9月8日)、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博4月13日~10月13日)、延期されてました2021年ワールドマスターゲームズ関西が2027年5月に開催決定と日仏交流が飛躍する機会が続きます。2023年は本格的なアフターCOVIDとして、今後の2019年を超える需要を見据えて業界として取り組んでいく必要があります。

一方で海運市場は過去最大規模で運賃乱高下した2021年に続き2022年はロシア・ウクライナ情勢の影響、燃料価格の高騰、賃上げを求めるストライキが世界各国の港湾で発生し混乱は引き続き続いています。
また、長期化する高インフレにより米国での消費意欲が低迷しており、中国から米国への貨物の減少し、その他の航路でのコンテナ確保が容易になり2022年7月頃からコンテナ運賃が下がり始めており、併せて航空貨物も海運の動きに合わせて一時の高運賃から下落傾向に転じております。
2023年から多数の新造船が運航開始することでコンテナ運賃下落額は引き続き続くものと思われるがOPECプラスの大幅達成により原油価格の上昇に伴う燃料サーチャージ上昇のリスクは顕在化する可能性がある。

その他、輸送、貨物業界においてもSAF等、持続可能なエネルギーへの関心が高まっておりこちらにも注視が必要です。

皆様にとりまして2023年が素晴らしい年となりますことをお祈りしております。

全日本空輸
山口 智啓