CCIJF – 在仏日本商工会議所

銀行・証券・保険:金澤 啓樹/Banque Nomura France

新年明けましておめでとうございます。

2022年を振り返りますと、引き続きコロナ感染拡大への対応に追われる中、ウクライナ紛争に代表される地政学リスクの深刻化、また各中央銀行の金融政策変更に伴う、実体経済へのインフレによる悪影響など、様々なイベントに見舞われた1年でした。

マーケットはリセッションを織り込み、先行き不透明感のある中ボラティリティは高まり、株式市場、債券市場共に難しい舵取りとなりました。債券市場においては相対的に金利、為替などは堅調なものの、株式市場においては総じて市場の取引量がグローバルに低下し、低調なアクティビティとなりました。

投資銀行におきましても、このような不透明な先行き見通し、高騰するインフレ、リセッションの影響を受け、M&Aでは2022年9月末のグローバル・ディール(USDベース)が、前年同期比30%程減少しており、EMEAにおいては前年同期比20%減少しました¹。アメリカを中心に大型のM&Aディールが減少したこと、EMEAにおいては特にLBOマーケットが停滞したことがその要因となります。また、ECM、DCMなどのファイナンスもこのような市場環境の影響を受け、低調に推移しました。

このような金融環境ではありますが、サステナビリティ関連のアドバイザリー案件や、ESG/SDGs債の発行など、サステナブル・ファイナンスに関わるビジネスは堅調に推移しております。ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、ヨーロッパではエネルギー政策の課題も出てきておりますが、今後もフランス金融業界はサステナブル・ファイナンスにコミットしていくことかと思われます。

さて、ユーロ圏の景気動向についてですが、引き続きエネルギー価格高騰が経済活動に深刻な打撃を与えるとみて、野村では極めて悲観的な予想をしております。さらに、ECBによる積極的な利上げを背景に金融環境が広範囲に引き締まっており、消費者や企業を対象とする景況感調査にもそうした証拠が現れつつあります。野村では、景気後退が22年10-12月期から6四半期続き、ユーロ圏の実質GDP成長率が合計で2.5%押し下げられるとみております²。 厳しい見通しですが、フランスはユーロ圏で相対的に堅調を維持すると思われます。フランス政府が早期にエネルギー価格の上限規制を導入したこと、またロシア産天然ガスへの依存度を引き下げ、代わって原子力発電の比率を引き上げているためです。したがって、フランスでは消費への打撃は小さいと予想されます。

2023年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

1. Source: Dealogic
2. 2022年12月9日時点の弊社見通しとなります。