資産課税強化では資産家は国外に流出しない=調査機関CAE報告
首相府下の調査機関CAEはこのほど、課税強化による資産家の国外流出のリスクに関する評価報告書を公表した。
富裕者対象の課税導入による流出のリスクは微小と結論した。
報告書はまず、資産額上位1%の富裕者のうち、外国に移住する人は毎年0.2%程度であり、これは人口全体の0.38%と比べてむしろ少ないと指摘。
その上で、資産課税が大きく見直された過去の改正(2012-13年の課税強化と2017-18年の課税軽減)がどの程度の影響を及ぼしたかを評価した。
これによると、2012-13年の課税強化においては、流出者(帰国者を差し引き後の純流出数)が全体に占める割合は0.04-0.09ポイント増えたのみであり、また、2017-18年の課税軽減において、純流出数の減少は0.01-0.06ポイント分に過ぎなかった。
報告書の推計によると、資産課税が1ポイント引き上げられた場合で、長期的な資産家の純流出率の上昇幅は0.02-0.23ポイント程度、ISF(連帯富裕税)の復活(5.2ポイントの課税強化)の場合で、上位資産家の外国流出率は0.1-1%程度と、必ずしも大きくない。
資産家の外国流出の影響についても、報告書は、ISF復活という仮定において、企業付加価値の0.05%減、雇用総数の0.04%減と、喧伝されているほどには大きくないという結果が得られた。
ただ、報告書は同時に、資産課税強化の場合の資産家の対応は国外移住には限らず、節税対策など様々な手段がありうると指摘。
安易に増税しても期待した増収効果が得られるものではないと警告している。
折しも、予算法案を巡る議論で、左派野党の社会党はいわゆるズックマン課税(1億ユーロを超える資産に2%を課税)の導入を要求し、これが物議を醸している。
バイルー首相は、資産課税は資産家の外国流出を招くだけだとしてこの要求を退け、イタリアのように、有利な税制を用意して資産家の流入を促している国があるとも言明。
「税制ダンピング」という言葉を使ってイタリアを非難したことから、イタリアのメローニ首相がバイルー首相を批判するという一幕があったばかりだった。
