CCIJF – 在仏日本商工会議所

フランスの一般医という仕組みについて

日本では、患者さんが自分で専門医を探し、比較的自由に予約を取って受診することが一般的だと聞いています。例えば、皮膚のことであれば皮膚科、目のことであれば眼科、胃腸のことであれば消化器内科、というように、症状に応じて自分で専門科を選ぶことが多いのではないでしょうか。

一方、フランスでは少し仕組みが異なります。フランスでは、まず一般医、つまり médecin généraliste が患者さんを診察し、必要があれば専門医、すなわちスペシャリストに紹介するという流れが主流です。日本語では、一般医、家庭医、総合診療医、あるいは主治医と訳されることがあります。

一般医は、体のさまざまな症状を横断的に診る医師です。内科、皮膚科、精神科、小児科、婦人科、生活習慣病、感染症、予防医療など、多くの医学的知識を広く持ち、患者さんの全体像を見ながら診療します。一方、専門医は特定の分野に深く特化した医師です。例えば、心臓、皮膚、消化器、整形外科、婦人科、精神科など、それぞれの領域をより専門的に診察します。

では、なぜこのような仕組みが必要なのでしょうか。

それは、不調の原因が一つとは限らないからです。WHOは健康を、単に病気がない状態ではなく、身体的、精神的、社会的に良好な状態と定義しています。つまり、人の健康は、医学的な問題だけでなく、心理的な問題、社会的な環境とも深く関係しています。

例えば、ある患者さんが「ここ数か月、非常に疲れている」と相談に来たとします。その原因は一つではありません。感染症かもしれません。貧血かもしれません。肝臓や腎臓、甲状腺の問題かもしれません。睡眠の問題、栄養の問題、薬の副作用ということもあります。

しかし、それだけではありません。強いストレス、うつ、不安、燃え尽き、家庭内の問題、職場でのハラスメント、孤独、経済的な不安などが、疲労として現れていることもあります。

このようなとき、最初から一つの専門科だけに行くと、問題の全体像が見えにくくなることがあります。一般医は、まず患者さんの話を聞き、身体的な原因、心理的な原因、社会的な背景を含めて考えます。そのうえで、必要な検査を行い、必要があれば適切な専門医に紹介します。

また、紹介先は医師だけとは限りません。症状や状況によっては、理学療法士(kinésithérapeute)、心理療法士・心理士(psychologue)、看護師(infirmier)、ソーシャルアシスタント(assistant social)など、他の医療・福祉の専門職につなぐこともあります。健康を支えるためには、医師だけでなく、さまざまな職種との連携が大切です。

もちろん、すべての場合に一般医を経由すべきという意味ではありません。急に視力が落ちた、強い胸痛がある、事故にあった、緊急手術が必要である、といった場合には、救急や専門的な対応が優先されます。

しかし、日常生活の中で起こる多くの健康問題では、まず一般医に相談することが大きな助けになります。体の不調なのか、心の問題なのか、生活環境の影響なのか。どの専門家につなぐべきなのか。そもそも専門医に行く必要があるのか。そうした判断を一緒に整理するのが、一般医の大切な役割です。

フランスで暮らしていると、医療制度や予約の仕組み、専門医との関係が分かりにくく、不安に感じることもあると思います。だからこそ、皆様の悩みに応じて、まず安心して相談できる窓口でありたいと考えています。

体のこと、心のこと、生活のこと。どこに相談すればよいか分からないときにも、まず話していただける場所でありたいと思います。そして必要に応じて、適切な専門医や医療関係者へ丁寧につなぎ、皆様が安心してフランスで生活できるよう、お手伝いできれば幸いです。